就業規則の基礎「採用、異動等編」

採用手続


 

  1. 会社は、就職を希望する者の中から選考試験(人物、経歴、技能、健康その他必要な事項を選考)に合格した者を従業員として採用する。但し、会社が必要と認めた者については、採用試験を省略する事がある。

会社は公正な採用につとめなければなりません。基本的に男女を差別無く選考する必要あります。(雇用の分野における男女の均等な機会及び待遇の確保等に関する法律第5条)。

この他に採用手続の項目では「採用選考時に提出する書類」「内定取消事由」「採用時に提出する書類」などを定めるのが一般的です。

試用期間


  1. 従業員として新たに採用した者については、採用した日から3か月間を試用期間とする。
  2. 前項について、会社が特に認めたときは、この期間を短縮し、又は設けないことがある。
  3. 試用期間中に従業員として不適格と認めた者は、解雇することがある。ただし、入社後14日を経過した者については、第47条第2項に定める手続によって行う。
  4. 試用期間は、勤続年数に通算する。

試用期間を設ける場合にその期間の長さに関する定めは労基法上ありませんが、従業員の地位を不安定にすることから、あまりに長い期間を試用期間とすることは好ましくありません。

時に、試用期間中は自由に解雇できると考える会社がありますが、例え試用期間と言えども自由には解雇できません。

正式採用よりは緩やかですが、、「解雇は、客観的に合理的な理由を欠き、社会通念上相当であると認められない場合は、その権利を濫用したものとして、無効とする」との考え方は大切です。何の理由もないのに試用期間が終われば解雇は許されないことになります。

試用期間中の解雇については、最初の14日間以内であれば即時に解雇することができますが、試用期間中の者も14日を超えて雇用した後に解雇する場合には、原則として30日以上前に予告するか、又は予告の代わりに平均賃金の30日分以上の解雇予告手当を支払うことが必要となります(労基法第20条、第21条)。この事も忘れ勝ちで14日を超えているけど、試用期間中だから解雇予告手当は必要がないと思っている会社もあります。注意しましょう。

試用期間は、正式採用になった時の勤続年数に通算するのは一般的な考え方です。

労働条件の明示


  1. 会社は、従業員を採用するとき、採用時の賃金、就業場所、従事する業務、労働時間、休日、その他の労働条件を記した労働条件通知書及びこの規則を交付して労働条件を明示するものとする。

従業員を雇い入れるに際し、従業員に賃金、労働時間、その他の労働条件を明示することが必要です。特に、労働条件を明示するに当たり、次の1から5までの項目(昇給に関する事項を除く)については、書面を交付して明示することが義務付けられています(労基法第15条、労基法施行規則第5条)。

  1. 労働契約の期間に関する事項
  2. 就業の場所及び従事すべき業務に関する事項
  3. 始業及び終業の時刻、所定労働時間を超える労働の有無、休憩時間、休日、休暇並びに交替制により就業させる場合における就業時転換に関する事項
  4. 賃金(退職手当及び臨時に支払われる賃金等を除く。)の決定、計算及び支払の方法、賃金の締切り及び支払の時期並びに昇給に関する事項
  5. 退職に関する事項(解雇の事由を含む。)

さらに、パートタイム従業員については、雇入れに際して、昇給、退職手当、賞与の有無を文書の交付等により明示しなければなりません(パートタイム労働法第6条第1項)。

2013年3月26日 | カテゴリー : 就業規則 | 投稿者 : admin

就業規則の基礎「総則編」

 就業規則では第1章は「総則」を定めるのが一般的です。総則には、一般的に就業規則の作成の目的や適用範囲等を規定します。


目的

  1. この就業規則(以下「規則」という。)は、労働基準法(以下「労基法」という。)第89条に基づき、エーディーアール株式会社の従業員の就業に関する事項を定めるものである。
  2. この規則に定めた事項のほか、就業に関する事項については、労基法その他の法令の定めによる。

ほとんどの会社の就業規則の始まりはこのようなものです。1ではこの規則は労働基準法第89条の定めにより作られてものであること、2ではこの就業規則に定めがない事項については、労基法等関係法令の規定によるものであることを示しています。

就業規則で定める基準に達しない労働条件を定める労働契約は、その部分については無効となります。この場合において、無効となった部分は、就業規則で定める基準によることになります。(労働契約法第12条)

また、就業規則は法令又は事業場に適用される労働協約に反してはなりません(労働基準法第92条)。


適用範囲

 

  1. この規則は、エーディーアール株式会社の従業員に適用する。
  2. パートタイムの就業に関する事項については、別に定めるところによる。
  3. 前項については、別に定める規則に定めのない事項は、この規則を適用する。

正社員、パートタイムなど、就業形態の違いがある従業員がいる場合は、全ての就業形態の従業員の定めが必要です。

全く、違う規則にするのか、一部の違いにするのか考えが分かれるところです。当事務所では、基本的には同じ就業規則を原則的には適用し、違う部分だけを分けて定めることをお勧めしています。

パートタイム労働法(「短時間労働者の雇用管理の改善等に関する法律」)によると、パート労働者の待遇を正社員との働き方の違いに応じて均衡(バランス)を図るための措置を講じるよう規定しています。

具体的には、職務、人材活用の仕組み、契約期間の3つの要件が正社員と同じかどうかにより、賃金、教育訓練、福利厚生などの待遇の取扱いをそれぞれ規定しています。

法律論だけではなく、働き方が多様化している現在においては、パートタイムの有効的な活用のためにも、基本的な部分は同じ就業規則を適用する方が良いでしょう。

パートタイムに関しての取り決めは後に取り扱います。


規則の遵守

 

  1. 会社は、この規則に定める労働条件により、従業員に就業させる義務を負う。また、従業員は、この規則を遵守しなければならない。

労働者及び使用者は、就業規則等を遵守し、誠実に各々その義務を履行しなければならないと規定されています。(労働基準法第2条)

また、労働契約法第2条には次のように定められています。

  1. 労働契約は、労働者及び使用者が対等の立場における合意に基づいて締結し、又は変更すべきものとする。
  2. 労働契約は、労働者及び使用者が、就業の実態に応じて、均衡を考慮しつつ締結し、又は変更すべきものとする。
  3. 労働契約は、労働者及び使用者が仕事と生活の調和にも配慮しつつ締結し、又は変更すべきものとする。
  4. 労働者及び使用者は、労働契約を遵守するとともに、信義に従い誠実に、権利を行使し、及び義務を履行しなければならない。
  5. 労働者及び使用者は、労働契約に基づく権利の行使に当たっては、それを濫用することがあってはならない。


これらは労働契約の原則と呼ばれてます。法律用語では労働者が従業員、使用者が会社となります。会社も従業員も就業規則に定められた事項を遵守するとともに、信義に従い誠実に、権利を行使し、及び義務を履行しなければならないと定められているわけです。

就業規則は大切です。

「常時10人以上の労働者を使用している事業場では就業規則を作成し、当該事業場に労働者の過半数で組織する労働組合がある場合にはその労働組合、そうした労働組合がない場合には労働者の過半数を代表する者の意見書を添えて、労働基準監督署長に届け出なければなりません。 」と労働基準法には定められています。

しかし、本来就業規則は1人でも労働者=従業員を使用している場合は作成するべきです。

就業規則とは労働条件を明確にするだけではなく、働く環境を整え従業員のモチベーションを上げる、労務トラブルの予防、万が一労務トラブルが起こったときの企業防衛に必要なものです。

小規模企業の場合、トラブルが起き労働審判や裁判で賠償が確定すれば、その存続すら危ぶまれることがあります。

そのようなリスクを持ったままでは、経営者もトラブルとなった従業員以外の従業員も安心して働くことができません。

(AU)